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  • 私、“彼好み”になれない Vol.1

    私、“彼好み”になれない:「俺好みの服着てよ」女子アナっぽさを求められ、翻弄される女

    女なら、経験のある方も多いだろう。

    恋人にファッションをダメ出しされ、“俺好み”を強要されてしまうこと。そして愛されたいと願うあまり、自分の趣味を押し殺してしまうこと。

    総合商社勤務の芽衣(31歳)もまさに今、葛藤を抱えている。

    ー私、“彼好み”になれない。ー

    というのも彼は、こだわりのある最新のデザインを好む芽衣に対し、凡庸な女子アナ風ファッションを強要するのだ。

    あなたなら、恋人のために好きなファッションを諦めますか…?


    運命の出会い


    金曜、19時。

    芽衣は慌ててオフィスを飛び出し、タクシーを拾った。

    今日の食事会は、恵比寿に19時半。...このまま車がスムーズに動けば、余裕で間に合うだろう。

    後部座席に身を沈めて、ふぅと小さく息を吐き、バッグから手鏡とリップを取り出した。

    普段使っているバーガンディーではなく、好感度抜群なピンクベージュの口紅を。

    手早く化粧直しを終えると、今度は身だしなみのチェック。

    普段は滅多に選ばないラベンダーカラーのフレアスカートを着ているものだから、どうにもソワソワと落ち着かない。

    けれども「モテ服で来い」というのが、今夜の女性側幹事からの指示なのだ。なんでも今回の男性陣は幹事的にかなりのおすすめ物件らしく、最初のお誘いLINEからも、彼女のそこはかとない気迫が感じられた。

    内心、面倒だなぁと思っていた。

    しかしながら芽衣は、この後すぐに心を改めることとなる。

    なぜならこの日の食事会がきっかけで、芽衣は運命の出会いを果たしたのである。

    しかもその相手は、IT系スタートアップ業界で期待のホープと噂されるイケメン、長谷川剛(はせがわ・つよし)。芽衣も名前だけは知っている、ちょっとばかり有名な男だったのだ。



    その翌日。

    食事会での席は離れていたにも関わらず、彼のほうから芽衣にLINEが届いた。

    “芽衣ちゃん、すごくタイプ。よかったら今度、ふたりで食事でも行かない?”

    この誘いに即レスしたことは、言うまでもない。

    …ところが、運命はそう簡単に幸せを許さない。

    この初デートで、芽衣はこの男から思いがけぬ洗礼を受けるのだった。

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